コラム

column

単身移住した能登町で、新しい家族ができた。
国際協力で培った経験を活かし、地域活性化を支援。

川畑 智恵(かわばた ちえ)さん

岐阜県出身、昭和51年生まれ。海外ボランティアや国際協力の職を経て、国内地域づくり団体の支援のためIターンで能登町に移住。地域おこし協力隊の3年間に町内で結婚出産した。


国際協力の仕事から日本をもっと知りたくなった。

能登町に来る前は、名古屋にあるJICA中部(独立行政法人国際協力機構中部国際センター)で、青年海外協力隊や海外ボランティアなど国際協力の仕事をしていました。仕事柄、海外の情報は入ってきますが、国内の情報はなかなか入ってきません。国内でも様々な課題に取り組むNPOやNGOがいるけれど、そもそも私は日本の現状を理解していない、国内のことが分かっていないなと感じていました。

私自身も海外ボランティアの経験があり、地域活性化の活動を行いました。その自らの経験を国内で生かそうと思ったら、まず国内の勉強からしないといけないと思いました。

名古屋で働きながら珠洲のマイスターを受講。

金沢大学の「里山里海マイスタープログラム」というのが、能登半島の珠洲の旧小泊小学校で行われていると知り、珠洲市の場所を地図で確認したら、勤め先の名古屋から上に真っ直ぐの場所です。実は思っていたより遠かったのですが、その時は「近いかな?」と思い、受講を決めました。

職場の理解もあって、第一金曜日と第三金曜日の夕方、仕事が終わった後に金沢行きの高速バスに飛び乗り、金沢で1泊して翌日に珠洲に入るという遠距離通学で、1年間月2回通わせていただき勉強しました。

授業は大学のカリキュラム方式で進められ、教室から外に出ることがすごく多かったのですが、1泊2日では方言すらなかなか聞くことができません。同じ思いを持つ若い人たちの出会いはすごく多く、仲間も増えたのでよかったのですが、地域のことが分かったとまでは言えないなと感じていました。

能登町に移住。まずは小木で地域づくり団体をサポート

地域をちゃんと知るには、「やっぱり住んでみたいな」と思うようになりました。そのことを友人に話してみると、能登町の小木地区で、森を通した地域づくりの活動を手伝う人を探しており、空いている家もあると言う。私の出身の岐阜には海がなく、小木は海が目の前です。ちょうど仕事の切りもよく、「これは住んでみたいな。ちょっと住んでみようかな」と、小木にやってきました。

小木地区は、九十九湾に面する岬で、古くから海に関することを生業とする人たちが多い地域です。そこの地域団体「グリーンキーパーズ」では、生物多様性の保全や自然体験の場づくりをしており、私は地域での聞き書きなどの活動を行いました。町のこと、食に関すること、子どもの頃の遊びなどについて、年配の方を中心に様々な職業の方々にお話をうかがいました。聞き書きした内容は、それを糧に今後の活動プログラムをいろいろ作っていこうとするときの財産になります。地域に何があるのか、何があったのか。人を呼ぶには、私たちはこれから何をしたらいいのかを考えるうえでのネタですね。

その他には活動の一環で、山に長けた人について行って、山の整備をしたり、伐り出してきた木材の加工を、地域の人たちと一緒にみんなでやりました。

地域おこし協力隊に応募。そして農家の嫁に。

小木地区は、新しいものを受け入れてくれる土地柄です。住んでみたら、女性1人ということもあるせいか、皆さん気を遣ってくださり、みんな本当にあったかく迎えてくれました。毎日どこかでおしゃべりしたり、ご近所さんのお手伝いをしたりしていたら、あっと言う間に地域の有名人になりました。

半年くらい活動のお手伝いをしていたら、能登町で「地域おこし協力隊」の募集があると声をかけていただき、応募してみることにしました。受験する段階で、「万が一、結婚することになって、さらに出産となっても、そのまま雇い続けてくれるか」を尋ねました。「それは喜んで」と言ってもらえ、「それでは、もしタイミングが合ったら遠慮なく」と思っていたら、本当に結婚し、子どもにも恵まれました。産休も育児休暇(無給)もいただくことができ、無事職場復帰させていただいています。でもあの時「仕事だけしてください」とノーの返事だったら、たぶん地域おこし協力隊はやらなかったと思います。

今の主人とはマイスタープログラムで知り合っていたのですが、移住の段階ではあくまで受講仲間。魚が豊富な小木に住みはじめ、「この地域のお米も食べてみたいな」と思ったときに、農家である今の主人のことを思い出し、連絡を取ると、すばらしく美味しいお米を持ってきてくださった。それが縁ですね。夫もUターン組です。

このまちで子育てが始まった。

子育てが始まり、住民として前とは違う目線が出てきました。まだ勉強中ですが、ほかの市町村の状況もすごく知りたいなと思っています。能登町は、一対一で話せる環境がものすごくあって、役場の方や、子どもと遊びに行く施設の方など、個人個人の事情を組んで下さるところが非常に多いです。

とても良い反面、子どもの少なさも非常に実感はしていて、子ども同士、友達同士を考えた時にちょっと少ないかなという気持ちはあります。例えば高校まで能登町で過ごし、いざ大学で町外に出たら、人の多さが違い、人間関係の結び方が違う。どういう衝撃になるのかな。だから、何にでもドンと構えられるような、心の大きさ、広さを持った子に育てたいと最近は強く思っています。外を見て来て欲しい反面、「本当に大切なものは何か」を自分で選択をする時に、能登町には外には無いものが山ほどあると、自分で気付いてもらえるように育てたいですね。

子育てする母親に、住民の温かい目線。

ここでは、例えば子どもを抱っこしている時、みんなが声をかけてくれます。みんなが1対1の関係を結び、見守っていてくれる感じです。極端な言い方をすれば、安心して目を離せるとでもいうような、見守りをとても感じています。

なぜ気付いたかと言うと、実家に帰る時に、まちで誰も見向きもしないことに衝撃を受けたんです。能登町だと、子どもを抱っこして歩いていたら、みんな道を開けてくれたり、「寒いから風邪をひかんようにねぇ」と声をかけてくださったり、子どもの顔を見てあやしたり。ところが、子どもを抱っこした母親が歩いていても、別に誰もよけもしない。「あれっ?!」と戸惑い、「あ、そっか、こんなもんか」と、能登町の温かさに気付かされました。

母親ネットワークで、楽しい子育て活動を。

自分のこどもを自然の中で遊ばせたいと思って勉強しています。能登町には子どもが自主的に遊ぶことができる自然が、海にも山にもあります。そこで、子どもが自主的に遊べるようになるにはどうしたらいいのか。同じ思いを持ってるママさんたちを募って遊び場ができたらいいなと思っています。でも、子どもはどんどん成長しちゃうので、急がないと。

「子どもの友達が増えてほしい」と思ったときにも、「子育ての仲間を増やしたい」と思ったときにも、やっぱり移住者がもっと来て下さるといいですね。

能登町の魅力、「自然」と「ひと」。

地域おこし協力隊としての業務は、地域団体の支援と移住定住サポートです。 地域団体の支援では、引き続き小木の活動支援もしています。それと、私は小木しか知らなかったので、別の町内地域のことを、順次調べていっています。能登町って本当にさまざまなんです。「山の暮らし」と「海の暮らし」というような一言では、とても分けられません。多種多様の魅力、特徴が本当にあるんですね。

それを、できれば公民館単位で全部調べていきたいのですが、出産で中断もしまして、まだまだ到底やり足りません。順にまずは、町を見て、お話をいろいろ聞かせてもらっている所です。

私にとっては、能登町の魅力って言ったら、やっぱり「自然」と「ひと」なんですね。住民の数は少ないけれど、素材に関しては能登町はたくさんある。それを他市町の様子も参考にしながら、うまく活かしていきたいなと思っています。

 

2016.3月インタビュー