能登町定住促進協議会

能登町移住ガイド

Guide

移住を検討する前にまずは能登町がどんなところか知っておきたい。そんな方のために、気候、文化、住まい、子育て、仕事など、9つのカテゴリーに分けて、能登町についてご説明します。

移住ガイド

地理

能登町エリアマップ

石川県能登半島の北部に位置する能登町は、2005年に3つの自治体が合併して誕生した人口約17,000人の小さな町です。世界農業遺産にも指定される豊かな自然が特徴で、定置網漁業が盛んな町としても知られています。

能登町には195の農山村や漁村が集まっており、それぞれの町で神事が行われるため地域ごとの文化や伝統が色濃く残っています。

宇出津エリア
古くから内浦地区の経済の中心として発展してきた漁師町。7月初旬に催される「あばれ祭り」を皮切りに能登町の夏祭りは始まります。
鵜川・瑞穂エリア
能登町の南西に位置する海沿いの町。古くから漁師たちが豊漁安全を祈ってきた「にわか祭り」が有名です。
柳田エリア
ブルーベリー栽培が盛んな内陸の町。能登内でも最大規模のキリコが練り歩く「柳田大祭」は圧巻です。
小木エリア
全国有数のイカ漁寄港地として有名。大漁旗を掲げた船が湾内をめぐる「とも旗祭り」は、県の指定無形民俗文化財にも指定されています。
松波エリア
能登町の北東、珠洲市との境に位置。キリコの前面に飾った人形の出来栄えを競い合う「松波人形キリコ祭り」が代表的。

奥能登の気候

実は穏やかな海

能登半島というと荒波が押し寄せる日本海の姿を連想されると思いますが、じつは半島先端部の内側(内浦)にある能登町の海は比較的波が穏やかです。荒れた天候を受け止めるその姿から「男海」と呼ばれる外浦に対して、やさしく女性的な景色を見せる内浦は「女海」と呼ばれています。日本百景の一つに数えられる九十九湾や、穏やかに湾曲した砂浜が印象的な恋路海岸がその代表例。外浦は輪島市などのエリアを指します。

また、内浦の海岸線は急深な地形になっており、外浦と比べて気候も穏やかです。定置網漁などの漁業が盛んなのはそのためです。

積雪もさほど多くありません。

能登町は、石川県の中でも年間を通じて気候が穏やかな町です。年間平均気温は13度前後と金沢市より若干涼しい位で、年間雨量も1700mm前後と北陸地方の中では少ない方です。本州と比べて標高が低いため、同じ北緯の新潟県と比べても積雪は多くありません。積雪の多い1月~2月でも、山側の最深部で1m、海側で30㎝程です。
道路は除雪されるため、急な降雪時以外は出勤時間より5分〜10分早めに家を出れば間に合います。ただし、家の前は自分たちの責任で除雪する必要があるため、朝はひと苦労します。海側から山側まで車で30分程の距離なので、山側の自然公園などで子どもと一緒に雪遊びもできます。

祭礼文化

地区ごとに、伝統的な祭りや民俗行事が根付いています。

能登町の祭りの主役といえば「キリコ」と呼ばれる大きな奉燈です。神輿の先導役として町中を練り歩き、夜になると明かりが灯され幻想的な世界を創り出します。日本遺産にも認定されるキリコ祭りは、7月第1週に開催される宇出津の「あばれ祭り」を皮切りに各地域で毎週のように催されます。その土地ならではの独特な演出から「奇祭」として取り上げられることが多く、町の重要な観光資源にもなっています。

また、キリコ祭りには「ヨバレ」といわれる招待風習があり、各家庭が普段からお世話になっている親戚や知人を招いてごちそうを振る舞います。

鬼や天狗などの面をつけた一行が家々を訪れ、怠けグセのある子を戒めて回る「アマメハギ」や、一年の収穫を感謝するため目に見えない神を入浴と食事でもてなす「あえのこと」など、独自の祭礼文化が現存しているのも特徴です。この二つの祭礼はそれぞれユネスコの無形文化遺産に登録されています。

祭礼文化はさまざまな神々に感謝と祈りを捧げる儀式です。おもに春祭り、夏祭り、秋祭りに分かれますが、能登町全体としての祭礼は一つも無く、各集落の祭礼様式によって農山村と漁村ではその内容が大きく異なります。

奥能登のキリコ祭り分布図

能登町にはその土地の文化や歴史、伝統を色濃く反映した祭礼文化が多く残っており、町の人たちは祭礼文化を守りつなげていくことを大事に考えています。祭礼を行うためにはさまざまな準備が必要で、町民がほぼ総出で取り組みます。また、祭礼が行われる日には年代や性別を問わず多くの人たちが里帰りをします。

能登町出身者にとって地元の祭りが行われる日は、正月のように大切なものなのです。

暮らし

実はそれほど不便はありません。

能登町での暮らし方は地域によって異なります。電車は運行しておらずバスの本数も都会と比べて少ないですが、どの地域でも町の中心地まで車で30分以内で移動できるため、主要な医療施設や買物などで不便することはありません。医療施設に関しては総合病院が一つ。民間のクリニックも一通りあります。

のと海洋ふれあいセンターや五色ヶ浜、赤崎海岸など、のびのびと安全に自然あそびができる施設や公園が充実しているのも能登町の特徴です。山や海など自然を取り入れた遊びは五感を刺激し、子ども達の好奇心や探究心を養ってくれます。どのエリアに暮らしても自宅から海や山まで15分以内でアクセス可能と、自然と仲良くなれる環境も整っています。

子育て

現在、能登町には9つの小中学校があります。クラスの数は基本的に一つ。多くても二つまでで、生徒数は一組あたり15〜20名前後となります。大半が保育園から同じ顔ぶれになるので、子ども達の間には親戚以上兄弟未満の深い交友関係が築かれます。保育園や小学校の給食に地元産の食材やお米が多く使われるのも特徴です。

豊かな自然環境の中で何世代も暮らす能登の大人たちは心にもゆとりがあります。そのため子ども達はのびのびと大らかに育ちます。

宇出津のこどもみらいセンターや松波のまつなみキッズセンターは小学生の子を持つ親にとって、とても利用価値の高い施設となっています。子ども達が小学校を下校してからキッズセンターに夕方5時まで滞在し、家に帰るという流れができあがっているため、親御さんはお迎えのスケジュールが組みやすく、はたらく母親の応援もしてくれます。また、上級生と下級生が入り混じって遊んだり、宿題をするなど、学童期からのコミュニティ形成にも一役買っています。

能登町でより良く暮らすためには集落内の付き合いを疎かにしてはいけません。人間関係の濃さは都会とは比べものにならず、たとえば魚を釣って近所に配ったり、町の仕事を手伝ったりすると、それがたくさんの野菜になって返ってくることがあります。さまざまな集落活動のごほうびとして、季節ごとの旬の食材が「おすそわけ」によって町全体に流通する。これも能登町の風習の一つです。

古くからの民俗風習が根付く町なので、実際に暮らしてみたいと分からないことも多々ありますが、コミュニケーションさえ確立すればとても住みやすい町になるでしょう。

住まい

移住する際に最も苦労するのが住まい探しです。空き家の数自体は多く、なかには裏庭に田畑が広がるような魅力的な空き家も存在しますが、「先祖代々続く家を明け渡したくない」などのさまざまな理由から「だれも住んではいないけど空いていない家」がほとんどです。

Iターン移住を希望する場合、まずはじめに「住みたいエリア」を決めます。それからエリア内にある空き家の中で「賃貸」や「売買」など、条件に見合った物件候補から選んでいきますが、実際に即入居できる状態の空き家は極めて稀です。「トイレや風呂が古くて使えない」「前使用者の家財が残ったまま」など、古民家ならではの問題点が浮上する場合もあります。

移住者によっては仕事を優先し、住まいは後から決めるといったケースもあります。

仮住まいにおすすめの家

本住まいにおすすめの家

投資や事業を目的とした不動産物件とは精神的に異なり、家主からすると代々受け継がれてきた家は非常に尊い存在でもあります。そのため、「Iターン移住者などの見知らぬ人に突如として家を譲ることはほとんどなく、お金のことは二の次で「自分の代わりに大切な家を受け継いでくれる人」を求める家主さんが比較的多く存在します。

そうした理由もあり、能登町定住協議会では希望するエリアで3〜5年程度の仮住まいをし、「人となり」が地域に馴染んだところで、本住まいの家(新築、中古、古民家リノベーションなど)を探すことをおすすめしています。仮住まい中の家賃の相場は3〜5万円。本住まいの家として中古住宅を取得する場合は、およそ100万円〜500万円が平均的な売価となっており、中には田んぼや畑、山がセットになっている物件も存在します。

仮住まい探しや移住後の本住まい探しについては、必要に応じて移住コーディネイターが同行して一緒にサポートいたしますのでご安心ください。

仕事探し

能登町全体の求人数は平均すると月に100件近くあります。IT系やファッション関連の求人こそ少ないですが、農業や漁業といった一次産業や公共工事、介護、事務職など基本的な職種は網羅されており、特殊な仕事を希望する人以外は比較的スムーズに採用は決まるでしょう。

能登町の地場産業は人手不足の状態が続いており、生産数を確保できないとの理由で受注の数を減らしている事業所が多くあります。仕事を選ぶ方法としては「自分に合う仕事」を探すのではなく「能登が求める仕事」とは何かを考えて、自分に適合させることをおすすめします。

また、移住コーディネーターによるキャリアカウンセリングも実施しています。必要に応じて気になる求人情報を2〜3件ピックアップしていただき、その仕事と個人とのマッチングや、キャリア設計などを共に考えていきます。

移住サポートでは職場見学や業務体験なども行なっています。積極的に参加して能登の未来を共に築くことができる仕事を探してみてください。必要に応じてコーディネーターが同行します。

起業支援

今、能登町には豊富な資源を活かして起業する人たちが増えています。

新しく起業や創業がしやすい補助施策を用意するほか、事務所や古民家などの物件探しもお手伝いしています。また、廃業した空き店舗や廃業予定の店舗を引き継ぐ取り組みも開始しており、起業とはひと味違った「継業」という選択肢もあります(準備中)。

心構え

こんな人は移住に向いていません。

他人と関わらず、田舎で自給自足の生活をしてみたい人
たしかに自給自足は可能ですが、人と関わらないことと、集落活動に参加しないことは同義であり、その行為自体が集落に大きなストレスをかけてしまいます。
おすそ分けや補助金などの支援を重視する人
補助金は一過性であり、おすそわけは必ずもらえるものではありません。集落で共に生きていくための「おたがいさま」という文化を尊重する、本人の意思が何よりも大切です。
ご近所付き合いが苦手。静かに暮らしたい人
奥能登はのんびり静かです。しかし、仕事以外にも集落活動や祭礼など想像以上に人手が必要とされる場が多く、ある意味では都市部よりもやるべきことが多くなります。
移住しても今の生活を基準に考えたい人
都市部と同じ生活も不可能ではありませんが、それはどこの地域でも同じです。比べれば比べるほど不便なことが目につきます。スタバやマックが無くても、安くて美味しい旬の食材を一年中味わい続ける方が経済的かつ健康的かもしれません。

こんな人は移住に向いています。

能登の文化を守りながら、活性化させたい想いがある
日本古来の文化が今も受け継がれている能登町では、特に祭礼文化を守りたいという代々の強い意志があります。しかし、人口が減ってきている中で、集落に暮らす一人一人の負担が増加してきました。同じ想いで文化を維持、活性化してくれる移住者は集落の貴重な支えになります。
人付き合いが得意。資源を活かして起業してみたい
人付き合いが基本の能登だからこそコミュニケーションスキルは非常に重要です。ただ、気を抜くと永遠にしゃべり続けるじじとばばもいますので、さじ加減が大事です。さらに眠っている資源や活用されていない店舗など、さまざまな方法で自己実現をすることが可能です。
多少、不便でも暮らせる自信がある
サバイバルではありませんが、便利と不便の本質を再認識したいという方も奥能登への移住に向いています。実は都市部よりも災害時に強い奥能登は、災害リスクヘッジの意味でも注目され始めています。

あとがき

移住はその後の人生を左右する大きなイベントです。失敗した場合は自分自身が不幸になるだけでなく、受け入れた集落にも「うちの町はだめなのか」といった負の影響を与えかねません。移住に失敗した人の多くは「準備不足」と「急ぎ焦り」が原因となっています。

能登町定住協議会では移住コーディネーターが窓口となり「住まい」「仕事」「集落」の3つのポイントから、さまざまな事情に合わせてフルサポートしています。しかし、あくまでも大切なのは本人の努力!スムーズに移住が成功するよう、決断を焦らずにじっくりと移住計画を一緒に進めていきましょう。