能登で生きるのは難しい。
この町をよく知る人は、口を揃えて言うだろう。
伝統文化が暮らしに息づき、人もまたその伝統を守ろうと意気に燃える。
そんな風習を理解し、地域の一員となる覚悟がなければ、この町では生きていけない。
「いやさか、よっせ、さかよっせ」の掛け声と共に、キリコと呼ばれる巨大な橙籠が町を乱舞する。宇出津のあばれ祭りも、昔から続く伝統文化の一つだ。血気盛んなこの祭りも、舞台裏を覗けば次の世代への存続に向けて、子どもから大人まで多くの人たちが手と手を取り合い、支え合っている。
見せかけだけではない本当のつながりが、伝統と共に暮らす彼らの中にしっかりと根付いているのだ。
古くから漁業の中心地として栄えたこの町には、人と自然、人と人の結びつきに感謝する行事も数多く残されている。その象徴となるのが、祭りの日に各家庭が親戚や知人など、普段お世話になっている人を招いてごっつぉ(ご馳走)をもてなす、ヨバレといわれる風習だ。
伝統や絆を大切にしながら、しなやかに生きる。
能登町には、そんな誇り高き人々が暮らしている。