能登町定住促進協議会

コラム

column

数馬酒造株式会社

限りある資源を守りながら、
能登の醸造文化を世界に発信する。

酒造業
数馬酒造 株式会社

 

四大杜氏のひとつ能登杜氏発祥の地として知られる能登町。
「濃厚で華やか」と称される能登の酒を全国、全世界に広めようと切磋琢磨。
日々酒造りに励む若者たちの原動力となっているのは「能登の未来」を思う気持ちだった。


 

 

「数馬酒造」の代表酒「竹葉」といえば、あばれ祭やヨバレに欠かせない酒として地元では有名ですが、じつは世界のコンテストでも高い評価を受けているんですよね?

おかげさまで、世界最高峰の食の祭典といわれる「マドリッドフュージョン」に日本代表として参加することができました。ワインの祭典「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」などのコンペティションでも受賞しています。地元能登にこだわった酒が、世界の舞台で評価されるのは最高にうれしいこと。これからも能登の醸造文化を世界に発信していきたいですね。

 

「数馬酒造」のお酒はどうやって造られているんですか?

原料となるお米は、能登の契約農家さんと協力して石川県内で登録されている酒米の品種を栽培したものです。なので、使用するお米のほとんどが能登産。これを旧柳田村の山間に湧き出る上質な水で仕込んでいます。それと、世界農業遺産にも登録される能登の自然を守るため、こちらも地元の農家さんと連携して耕作放棄地を再利用した「水田作りからの酒造り」に取り組んでいます。2014年に始まってからこれまで東京ドーム5個分の耕作放棄地が水田になりました。竹葉のお酒が飲まれるほど、能登の耕作放棄地が減っていくという仕組み。「持続可能なものづくり」を目指すためには欠かせないプロジェクトです。

 

「持続可能なものづくり」ってなんですか?

酒造りは「米」と「水」という自然の恵みがあってこその生業(なりわい)です。僕たちはこの限りある資源をシェアし、循環させ、次世代に繋げていくことこそが、酒造りに関わる者としてのあるべき姿であり、使命だと考えています。そのためには耕作放棄地の再生をはじめ、雇用の創出、地域の活性化など、地域が抱える問題を解決しながら、持続性のあるものづくりの環境を整えなくてはいけません。資源、時間、人材、価値観など、あらゆるものを地域間でシェアしながら、どこにもひずみのない循環型のものづくりを目指していきます。

 

 

循環型のものづくりといえば、農業と畜産業とコラボしてお互いの資源を循環させた「能登牛純米」も発売しました。

米作りで発生するもみ殻を畜産業が堆肥に加工して、それを水田に返して農家の方たちがお米を育て、僕たちが磨いた米ぬかは牛の餌として活用されます。使用するのは食用米である「能登産ゆめみずほ」。生酛造りで醸したお酒になります。能登の自然と生業が共存しながら、里山里海の資源を循環させていく。それを少しずつ具現化させていくのが、この地での「数馬酒造」の役割だと思っています。

 

醤油づくりも始めたそうですね。

はい。じつは「数馬酒造」のルーツは、明治以前に創設された醤油蔵にあるんです。その醤油蔵の移転に伴って、廃園となった保育園を醤油蔵に改装しました。能登の耕作放棄地で栽培した小麦と大豆を使って、能登産と手作りにこだわった醤油づくりを目指しています。2019年の春に仕込みを始めるので、皆さんのお手元に届くまでにはもう少し先。そのほかにも廃園になった保育園や耕作放棄地のように、能登に眠っている遊休資産を再価値化して、新しい価値のあるものを創り出していければと思っています。

 

 

2015年にはそれまでの杜氏制を廃止して、社員が一体となって酒造りをする醸造体制に切り替わりました。

能登杜氏のお膝元ということもあって、実際に色々なご意見をいただくことがあります。僕自身、決して杜氏制に反対しているわけではないのですが、社員が働きやすくやりがいを感じる環境を作りたいという気持ちが強かったんです。現在、醸造社員の平均年齢は30歳。会社が考える組織図に人を当てはめるのではなく、集まってきた人たちの個性を生かした組織を作り上げる。そして、若手が活躍できる労働環境や設備投資を積極的に行うことによって、培われた技術や人材が持続可能なものづくりの礎になればと考えています。

持続可能なものづくりに向けたこれらの活動の結果、2018年には「はばたく中小企業・小規模事業者300社」や「地域未来牽引企業」に選定され、奥能登の企業初となる「ワークライフバランス企業 知事表彰」も受賞することができました。

 

 

「N-Project(※)」など、若者たちのサポートにも積極的ですよね。

県内の大学生が能登半島を舞台に、酒造りの開発から販売までの全過程に携わって、若者世代に向けた日本酒「Chikuha N」を発表するプロジェクト。あくまで学生をサポートする役回りですが、第1期のリーダーが現在「数馬酒造」の社員として酒造りに励んでいることを考えると、この活動はしっかり能登に還元されているんだなと感じます。毎年、学生との年齢差が広がっていくのが悩みの種ではありますが…(笑)。ちなみに第5期目となる「Chikuha N 2018」は、発売にして3日で完売しました。

※「若者が能登も農業も日本酒も盛り上げる!」をコンセプトにした学生主導の日本酒プロジェクト。数馬酒造をはじめとする能登の企業の支援のもと、耕作放棄地の開墾、完全無農薬の米づくり、仕込み、商品開発などをコンテンツ化し、能登の新たな魅力を発信している

 

「数馬酒造」では、若い社員さんがのびのびと働いている印象があります。なぜなんでしょうか?

若い社員が挑戦しやすい環境を整える。そういった意識は常にあります。できるだけ自由に、ワクワクしながら働いて欲しい。たとえば今年は醸造社員ひとりひとりが、自分自身が考える最高のお酒をタンクに仕込みます。完全にオリジナル。消費者が求める味を重視した酒造りも大事ですが、そればかりだとマンネリ化してしまう。ものづくりにはクリエイティブな思考も必要なんです。

 

クリエイティブな思考を生み出すためには何が必要ですか?

余剰です。それもあって、僕が社長になってまず見直したのが就業時間。会社として休日を増やしました。社員ひとりひとりの労働時間はかなり減ったと思います。キツイ、という酒蔵のイメージから脱却したかったのも理由のひとつですが、なにより心と体に余裕がないと良いアイデアは浮かびません。しっかりと休んで、考える時間を作ることも良いものづくりには必要なこと。賃金水準を高めていきながら、時間と働きやすさも還元したいという気持ちがありました。

 

ちなみに数馬さんはなぜ、能登町にUターンしたんですか?

「いつか起業したい」と漠然と思いながら、東京のコンサル会社に就職をしました。でも、いざ働いてみると「この仕事、自分じゃなくても良いじゃん」と感じる場面が多くて…。そんなときに父から「家の仕事を手伝わないか?」と誘われて。自分じゃないとできない仕事がしたいと考えていた矢先だったので、とくに迷うこともなく能登町に戻りました。もちろん、学生時代も含めた6年間の東京生活で色々なものを得ることができたし、決して遠回りしたとは思いません。仕事に対する考え方、多種多様な意見、人との繋がり。日本経済の最先端で学んだ経験は、今の仕事にも十分に生かされています。

 

社長になってから、どんなことをしましたか?

まず、ほかの社長さんがどんなことをしているのかを知るために、全国で活躍する石川県出身の経営者リストを作って、片っぱしから手紙とメールを送りました。たしか750人くらい。「このたび社長になりまして。若輩者ですが社長業を教えてください!」みたいな内容だったと思います(笑)。いくつか返事をいただいた方のもとへ連絡したり直接会いに行き、経営の原理原則、心構えなど色々なことを学ばせてもらいました。一語一句をメモに取りながら。空っぽだったので何でも吸収できましたね。

 

 

これから能登町で挑戦しようと考えている人に対して、どんなアドバイスがありますか?

考える前に行動を…。これは自分にも言い聞かせていることなんですが、じつは現実よりも頭の中で起こっていることの方が複雑で、行動にすると意外とシンプルだったりします。あと、能登町は若者にとって、チャレンジしやすい土壌だと感じています。なにかしようとしても都会だと埋もれてしまう可能性が高いけど、田舎であれば良くも悪くもすぐに目立つ。若ければなおさらです。これって、正当な評価を受けられるチャンスが多いということで、僕自身も色々なメディアに取り上げてもらってビジネスの視野が広がりました。

 

「数馬酒造」では、どんな人材を募集していますか?

アイデアが豊富で遊び心のある人。年齢を問わず、一緒に会社を作り上げるくらいの意気込みがあれば尚良しです。とくに採用人数や時期は決めていないので、入社したいという熱い気持ちのあればいつでも対応します。農家や畜産業などの第一産業とのダブルワークも歓迎。これからの時代はそうした雇用のシェアも必要だと思っています。

 


世界的な規模で取り組まれている「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に向けて、循環型のものづくりに挑戦している「数馬酒造」。
20〜30代の活気あふれる醸造社員を中心に組織された酒造メーカーが、能登全域を元気にする日はそう遠くないはずだ。


 

 

 

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