能登町定住促進協議会

コラム

column

奥能登の海岸沿いでバイク旅行者向けのライダーズハウスを開業。

大場小都美さん

石川県金沢市出身。食に携わる仕事に就きたいと10代で市内のホテルへ就職。フレンチを中心に30年以上にわたり腕を磨く。2016年に能登町越坂へ移住し、ライダーズハウス『PEACE』を開業。猫3匹と暮らしながら、海とバイク旅行を愛する人たちを迎えている。併設するカフェではオムライスやパスタなど自慢の料理も食べることができる。


能登の海を眺めていると力が湧いてくる。

 金沢に住んでいた頃から、能登の海が好きでよく遊びに来ていました。趣味のバイクで海岸沿いの県道をひたすら走り続ける。私の中で能登は第二の故郷のようなものでした。信号がほとんど無いので走りやすく、海と山が交互に訪れる景色も素晴らしい。能登半島はライダーたちの間でも人気のツーリングスポットです。だけど、一つだけ不満がありました。それは、気軽に泊まれる宿がないこと。立ち止まって自然を眺めたり、美味しいものを食べたりしていたら、とてもじゃないけど能登半島を1日で周り切ることはできません。そんな矢先に、子供たちから「今まで女手一つで苦労して来たんだから、これからは好きなことをしたら?」と声をかけられて…。バイカー専用の宿泊施設を始める決意をしました。開業したのは56歳のとき。人生は何歳からでも再スタートできる。そんなことを後押ししてくれた子供たちに伝えられた気がします。能登の海の魅力は、眺めているだけで心が落ち着き、自然と力がみなぎってくるところ。ちょっと嫌なことがあっても海を見ていたら、悩んでいるのが馬鹿らしくなってきます。

2年半かけて、ようやく見つけた理想の物件。

 ライダーズハウスを開業するときに一番苦労したのが物件探しです。目の前に海がある、県道か国道に面している、隣接する民家がない、敷地が広い、カフェと宿ができる。この条件に見合った建物が見つかるまで約2年半。最初は友人知人の手を借り、能登町移住促進協議会に相談し、最終的には役場の方に直談判をしてようやく出会うことができました。元々は民宿だった物件。建物の購入費用とリフォーム代は、助成金と金沢の自宅を売却したお金でまかないました。また、農家民宿の体験セミナーに参加して、能登の暮らしを知ることができたのも良かったです。バイク旅行でよく訪れていたので、能登のことをある程度は知ってたつもりでしたが、やっぱり住んでみないと分からないことはたくさんあります。そこで出会った人たちとは今でも繋がっており、早朝から深夜まで働きづめの日々で疲れていた私を精神的にも支えてくれました。それは今でも変わらず、能登町で暮らす人たちの優しさに助けられることは多いです。

 

能登の自然と食の魅力をSNSで発信。

 朝、出発するライダーを見送るのが私の日課です。そのときに海から昇る朝日や、海越しに見える立山連峰を撮影して、フェイスブックに投稿したりしています。理由は能登の自然の魅力をたくさんの人に知って欲しいから。いつかはこの九十九湾一帯にマリンスポーツが体験できる施設やキャンプ場などを設置して、能登の自然が堪能できるテーマパークを設立したいと思っています。もちろん料理人として、能登の食の魅力を伝えることも忘れません。最近、金沢に住んでいたときの友達から「若返ったね」とか「さらに元気になったね」と言われることが多いです。それは多分、大好きな能登の海の近くで暮らしているから。母なる海の力に感謝しながら、自分の夢に向けて挑戦し続けていきたいです。

1日の流れ

5:00 起床
宿泊客の朝食を準備したら、部屋の掃除や洗濯をしながらチェックアウトの対応をします。ツーリングに出発するライダーをかならず見送るのが私のルールです。
10:00 カフェの準備
カフェの開店に向けて準備をします。すべて一人で作業するので、慣れるまでは結構大変でした。たまにお客さんが片付けを手伝ってくれることもあります(笑)。
11:00 開店
ドレッシングからソースまでなるべく手作りを心がけています。定番の洋食にちょっとアレンジを加えた創作料理が得意です。コーヒーは能登の海洋深層水で淹れています。
13:00 ランチ営業
ランチ時間はライダーや地元の人達がランチを食べに来てくれます。休みの日には愛車のハーレーで海岸線をツーリング。能登の道は信号が無いから走りやすく、景色の移り変わりもダイナミック。本当に気持ちが良いんです。
17:00 チェックイン
チェックインの対応をしながら、宿泊客用の夕食を準備と明日の仕込みをします。大人数のライダーが泊まる日は、深夜まで宴が繰り広げられます。